2000年6月
「こぬか・漬け物・除草剤」
精米をすると玄米が、白米とこぬかに分かれます。
こぬかはある種の産業廃棄物で、処理に困っている業者さんもあるようです。捨て場所に困るそのこぬかを、除草剤の代わりに使う試みが3年目を迎えました。今のところは今年も順調で、さらに一歩進んだ減農薬の農法が確立されつつあります。
やり方は簡単。田植え直後に生のこぬかを田んぼにまきます。水の掛け口にドッとあけ、水の勢いで田んぼ全面に自然に広がっていく方法を採ることもあります。新鮮なこぬかには適度な油が含まれていて、田んぼの表面を流れるように滑っていきます。見ていると気持ちいいほどです。
こぬかは菌との相性が抜群のため、キノコなどの菌床に使われることも多いのですが、田んぼの中でもやはり同じで、すぐさま各種の菌と結びつき発酵分解を繰り返します。田んぼの表面が「わく」状態になります。この「わく」という状態が、除草に効果があります。ミジンコやプランクトンが増殖されていることも、ミミズの大発生が証明しています。私の田んぼを見た農家が、同じ農法に取り組む例も出てきました。こぬかには、米の味を良くする成分も含まれていて肥料効果もあります。いいことづくめですね。
夏野菜が出回るようになると、こぬかを使った漬け物、ぬか漬けが食卓をにぎわします。おいしいですよね。私も大好きです。ぬか漬けにすると、ただ野菜を食べるよりも栄養価が高まるといわれています。
ぬか漬けのおもしろいところは、温度管理やかき混ぜた回数によって味がころころと変わるということです。かき混ぜる人によっても味が変わります。味の変化も菌の作用です。小さなぬか床の中にも数え切れない多くの菌が繁殖していて、温度や酸素やライバルの菌の多少によって、勢力分布を変えてゆきます。増えたり減ったりしているわけですね。
その菌の作用を知る方法はないものでしょうか。酸っぱくなった、味が薄くなった、味の変化はいろいろありますが、どんな菌がどう働いて味が変わるのか、直接目では見えません。おもしろい、奥深いところです。
コメを作る際に出る副産物「こぬか」に対する興味は尽きません。
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