2000年7月
「時代」
田んぼにはとんぼが飛んでいます。
夕やけ こや〜け〜の 赤とんぼ、という歌のせいか、私なんかはどうしても、「とんぼは晩秋の風物詩」との思いこみがあります。しかし、とんぼの舞う本当の季節は晩秋ではなく夏。アジサイの咲く梅雨の頃、田んぼの中を泳ぎまわっていたヤゴが次々にトンボへと成長していきます。
羽の先の黒いもの、胴の黄緑色のもの。きらきらと光る大きいもの。(あかね色の秋の空を飛ぶとんぼと,、夏のとんぼは、種類が違うのかもしれません)
炎天下に田んぼのあぜ道を水回りしていると、いろんな種類のとんぼを見かけます。イネが風に揺られてサワサワと泳ぎ、その上をとんぼが舞う様は、見ているものにとって一服の清涼感があります。
環境の時代、エコロジーの時代といわれるようになりました。緑に囲まれた私の農村でも、ゴミの分別収集や、生活排水などへの意識が一段と高まってきています。
農業とは、緑を守り、水を守り、空気を守るものですが、これまで環境への配慮が一貫してあったとは言い切れません。田んぼからダイオキシンが検出されたと、昨年たびたび報道がありました。
『農水省は1960年代から約30年間にわたり全国の水田で使用されていた除草剤「クロルニトロフェン(CNP)」に毒性のあるダイオキシン類が含まれていた事が確認されたと発表。
(朝日新聞 他)』
その農薬は現在生産中止になっていますが、やめさえすればそれでいいのでしょうか。釈然としない何かが残ります。
ダイオキシン汚染の犯人に、農業も加わっていたのです。水田は環境にいい、なんてノー天気なことは言っていられません。
ダイオキシンは水に溶けないで、脂肪の中に溜まるのだそうです。ですから、我々の口に入るものとしては、農産物よりも魚介類が問題なんです。
『土壌に含まれるダイオキシンが土の微粒子に吸着されて河川に流れ込み、餌と一緒に魚の体内に入って高濃度に濃縮
されることが判明。』
原因となった農薬は農作物には害を及ぼさなかったものの、土を汚染し、川を汚染し、魚や海まで荒らしていたことになります。ひどい話ですよね。
そういえば、ベトナム戦争の被害者であるベトちゃんドクちゃんも、ダイオキシンの影響、アメリカ軍がまいた枯れ葉剤が原因です。
緑を守り、水を守り、空気を守る農業を見失わないようにしたいものです。環境の時代、とんぼも雑草も人間も同じ仲間です。
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