2000年11月

「スローフード」

 トマトジュースやケチャップで有名なカゴメという食品会社があります。そのカゴメが、CMで「スローフードに帰ろう」という言葉を使いました。キャッチフレーズです。ご存知ですか。「スローフードに帰ろう」です。
 このスローフードという言葉、ファーストフードの反対語なのだそうです。速く出来て、速く食べられるファーストフードは、確かに今の食生活になくてはならないものになっているけれども、本当にそればっかりでいいの
。さっさと済まして腹さえ満たせばいいの?本当に満足なの。そんな問いかけです。それがスローフードに帰ろうです。そう、ファーストフードって手軽で便利だし、安いし・・・・、こぎれいで、すぐ食べられて、味だってそれほど悪くない。でも毎日食生活がファーストフードばっかりじゃ、あまりにも味気ないんじゃないの? それで、スローフードに帰ろうです。いい言葉です。
 もとはカゴメのCMですから、イタリア系の太っちょのおばさんがトマトソースでグツグツと煮た大鍋をつかみながら家族のみんなに「ゴハンですよ〜」と呼びかける、そんなイメージです。わいわいと時間をかけて、ワインなんぞ飲みながら食事をするのだろうなあ、楽しそうな情景が目に浮かびます。もちろんスローフードは世界中どこにでも日本にもあります。コタツを囲んでみかんを食べる団欒の中にも、ピクニックに持っていく手作り弁当の中にも、スローフードはあります。円卓を囲んで食べる餃子の中に。すき焼きや、手巻き寿司パーティーの中にも。
 経済優先、ビジネス優先の現代では、速くてスマートで、的確で実用的で、便利なものが求められます。実利一辺倒の社会では、な〜に悠長なこと言ってんの?ゴハンなんかさっさと片付けて!と叱られるかもしれません。せちがらい世の中になってしまいました。効率を考えればファーストフードは絶対的です。でも、「豊かさ」ってある部分では「時間の使い方」と関係があるように思うんですよ。ゆっくりと、味わって、楽しんでとる食事。ガツガツとかき込むのではなく、食事自体を楽しむ「余裕」が欲しいところです。そう、「スローフードに帰ろう」。帰りましょう。おててつないで、みんなで一緒に帰りましょう。
 私は、真心込めて、そして気合を入れて米を作っています。「ゴハンって炊くのが面倒だよね」と言ってるあなた。袋を開け、おコメをカップで計量し、力をいれてコメを研ぎ、水に浸し、炊飯器のスイッチを入れ、炊き上がったら蒸らし、ふたを開けて切るように混ぜる、皆さんにお願いするのはそれだけです。ほら楽しそうでしょ。自炊のすすめ、手作りのすすめです。

(糸井重里さんがスローフードについて、インターネット上のコラムで「速くできて速く食べられるファーストフードに、なんだか満足できなかったぼくには、とても興味深いコンセプトだった」と取り上げました。感激、大絶賛!「ほぼ日刊イトイ新聞」いつも読んでます。温かみがあってとってもいい文章です。)  

 

 



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