2001年2月
「スローなブギにしてくれ」
スローなブギにしてくれ。ひとむかし前、こんなタイトルの甘いバラードがヒットしました。覚えている方いらっしゃいますか。
♪ ゥワンチュー オーレの肩をー、だきーしめてーくれ・・・ ♪
この欄の11月号にて、「スローフード」をとりあげました。その「スローフード」にあてて実はたくさんのご意見をいただきました。<早くて便利もいいけれど、ゆっくり作ってゆっくり食べて、食事を楽しむっていうのも、やっぱりいいよね。忙しくて、メシなんかカッ込んじゃう生活しててもさ、そういう時間は絶対忘れたくないよ。> ファーストフードの反対語、スローフード・・・・。そんな言葉があるんですね、知らなかった、なんていう人も含めて、スローフードへの思いは、みなほとんど同じようです。<最近の流行り言葉の『ホントの豊かさ』っていうのかな、あれだよね。理想論かもしれないけれど。>
思いのほかの反響に、僕はあらためて考えさせられます。忙しい現代人はスローということを忘れてしまっているのかもしれないなぁ、なんていう気がしました。(おお、エラそうだ!評論家みたいだ!) 僕は、スローって「味わう」ことなんだと思うんです。(おお、言い切っちゃった!)
そう、味わうことを忘れている現代人。味を味わう。時間を味わう。風景を味わう。会話を味わう。生活を味わう。人生を味わう。味わうとは楽しむといってもいいし、噛みしめるといってもいいですね。口に含んで、もぐもぐしながら、なめたり吸ったり、ああでもないこうでもないと・・・・。人生を味わう、人生を楽しむ、人生を噛みしめる。スローフードって言葉は、忙しくてせちがらい世の中に、そんなことを連想するのだと思います。
ビジネスの世界で求められるものは、スピードであるとよく言われます。決断のスピード。行動のスピード。情報のスピード。スピードの世の中では、噛みしめる間もなく、味わう間もなく、突っ走らなければなりません。
例えば、最初ポケットベルが出回りだした頃、「こんなものに呼び出されるのか」と、誰もが不快な感じを持ったと思います。あのポケットベルがほんの数年のうちに携帯電話に変わり、今では携帯電話はビジネスマンの必需品。もはや、あの最初の頃の、ポケベルに監視されてるようなイヤな感じは、遠い過去の話です。でもまだ、かれこれ10年しか経っていないですよね。最近は携帯電話で写真のやり取りができるのだとか。すごいですねえ、恐るべし速さ。情報化のスピード!
現代のスピードについていけなくて負け惜しみをいうわけではありませんが、そうかといってスローに徹するのも、これはこれでなかなか難しいと思います。スローな時間。スローな風景。スローな味。味わって味わってスローフード。スローなブギ。スローな生活。スローな人生。そうですね、スローな人生って、深みのある味を感じさせますね。うん、寄り道だって、きっといい道です。
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