2001年6月

「今年も一年生」

 雨が少ないような気がしませんか。
 毎朝、ラジオで天気予報を聞くところから、一日が始まります。
 雨の降りそうな日は、田んぼの水の見回りが短縮できますし、逆に暑くなりそうな日は田んぼが乾かないよう、丁寧な水管理が要求されます。軽トラで回るのにも、結構時間がかかるので、その日の天気と降水確率は、本当に貴重な情報です。
 
 イネはすくすくと育っています。この時期は、イネの一生の中でも、もっとも成長する時期です。人間で言えば、少年期。2〜3日見ないでいると顔つきさえも見違えてしまうほど、グングン成長します。
 おもしろいのは、私たちのする水管理で、そのイネの成長を多少コントロールできるという点です。たとえば、田んぼの水をたっぷりと張っておくと(深水管理といいます)、イネはひょろひょろと葉っぱを上に伸ばして、背が高くなります。一方、浅いヒタヒタ水にしておくと、イネは茎を増やして横に大きな株になっていきます。田んぼに張ってある水の加減で、出来上がるイネの形が変わるのですね。深水がいいか、浅水がいいか、どちらがいいとは簡単に言い切れません。天候や水温やいろんな状況で変わります。
 ですから、水を浅くしたり深くしたりしながら、自分が頭に思い描くイネの形に少しずつ近づけていくのです。葉っぱの長さはどうか、茎は何本に増えたか、根の張り具合はどうか、病気に犯されていないか、雑草に戦いを挑まれていないか、栄養状態はどうか。医者のような、子育て中の母親のような、診察も兼ねています。麦わら帽子をかぶって田んぼに入ったり出たり、あぜをグルグルと歩き回ったりしているのは、地味ながら大事な管理作業なのです。
 
 しかし天気は毎年変わるものです。去年の天気と今年の天気は同じではありません。今年の夏は暑くなるのか。冷夏なのか。それによって作りたいイネの形も変わるのですね。1ヶ月予報、2ヶ月予報、3ヶ月予報と先へいけばいくほど、天気予報もあまり当たらなくなるような気がします。さすがに最近は人工衛星から雲の動きを見ているからか、朝ラジオで聞く天気予報はなかなか正確ですが、もったいぶって報道される3ヶ月予報となると、下駄を投げてる程度の的中率のように思います。集中豪雨が続くのか、日照りが何日続くのか。
 去年のデータは参考にはなっても、今年もまったくそのとおりにいくという事はない以上、やっぱり今年も一年生。何が起こるかわかりません。すべてが初体験。初挑戦ですね。イネつくりは一年に一回転しかできないので、一生かかってもせいぜい40回しかできません。そして常に一年生なんですね。
 天気のコントロールもできるようになれば、どんなに楽かわかりませんが、でもきっとそれは農業ではなくて工業の世界です。わからないからこそやってみたい、うまくいかないからこそ面白い。私は「ピッカピカの一年生」を毎年楽しみたいと思います。 

 

 


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