「もやし」

 青白くてヒョロヒョロのやせっぽっち。部屋の中にこもっている弱々しいやつ。
 それが、もやしです。
 でも、そのもやしには驚くべきパワーが、秘められています。
 「もやし」という植物はありません。私たちがもやしと呼んでいるもの、あの、食料品売り場で売られている例のものは、正確には「豆で作ったもやし」。もやしとは若い芽のことを言うんですね。植物の名前ではないのです。漢字を当てるなら「芽やし」または「萌やし」だそうです。
 コメや麦、ソバや豆などの種子を発芽させたものすべてを、もやしといいます。例の「もやし」と言われ売られているものの多くは、「緑豆」の若い芽のことです。「豆もやし」と言って、豆の部分がまだ残っているのもありますね。茎だけのもやしよりも、豆もやしのほうが味が濃くておいしいですね。まあ、個人的な好みの問題ですが・・・。
 貝割れも、もやしです。大根のもやしです。
 われわれ人間が採って食べてしまう部分は、大根の種が芽を出して、光に向かって伸びようとするところ、です。貝割れは上のほうに緑のかわいい葉っぱがありますね。あれが成長の証、命の満ち満ちた部分です。人間は勝手なもんで、美味いとか辛いとか、ピリッとするとか言いながら、大根の命を摘んで食べるわけです。最近では、ブロッコリーのもやしもありますね。貝割れのようにパック詰されています。栄養価が高いというので、けっこう評判のようです。
 栄養価の話が出ましたが、もやしにすると、タネそのものよりも栄養価が高まります。たとえば、大好評販売中の発芽玄米、あれももやしです。一昨年、あの発芽玄米を研究するに当たり、資料を調べたところ、びっくりしました。玄米はもともとバランスの良い栄養価の高い食品ですが、その玄米をもやしにすると、玄米とは比べ物にならないくらい、栄養価がアップします。芽が出ただけで、なぜ?と思いますが、不思議な不思議な本当の話です。発芽玄米にすると、やわらかくなり、消化吸収も良くなりますから、いいことづくめですね。豆から作った「もやし」を考えてみると、豆ともやしの差といいましょうか、栄養価が増して、別の食材に変身してしまう、それがあらためてよく分かります。

 青白くてヒョロヒョロのやせっぽっち。部屋の中にこもっている弱々しいやつ。
 見た目や格好は貧弱でも、生き物が生きていく一番の出発点ですから、種子の時代に眠っていた何かが、力となって爆発するのでしょう。タネだった時よりも栄養価が高まるのは、そういうことなのだろうと思います。
 植物のほとんどは暗いところで静かに発芽します。少しでも光があると発芽できない暗黒状態大好き!なものもあります。おもしろいですね。
 春。・・・田んぼでは、種まきと苗の管理の季節になりました。もやしと苗は、同じもの。今年はイネの苗も、味見をしながら育てたいと思います。

 

 

 


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