「イマジン」

 さて、今日の時点ではまだ戦争は始まっていません。アメリカはイラクを攻撃していません。皆さんが、このフロム田んぼを読む頃にはすでに、ドカンドカンとおこなわれているのでしょうか。それとも、あっという間に終わってしまって、戦後和平だとかなんとかやっているのでしょうか。
 戦争の話は、あまりこの欄で書くべきことではないような気もするのですが、今回だけということで書きます。
 『イマジン』を歌ったのは、もちろんジョン・レノン。ご存知のように晩年は、ラブ&ピース(愛と平和)が旗印でした。ニューヨークで暗殺されたのは、もう20年以上も前。音楽を職業としていた人で暗殺されて死んだ人は、あとにも先にもジョン・レノンくらいしか知りません。偉大な人でした。
 「想像してみよう、平和な社会を。簡単に想像できるよ、国境のない社会も。白い人も、黒い人も、黄色い人も、赤い人も、みんな同じなんだ」
 
 農業が成り立つためには、何よりもまず平和でなければなりません。アメリカがアフガニスタンを攻めたとき、テレビからかいま見ただけでは、あの国に農業はありませんでした。20年も30年も戦争に明け暮れていた貧しい国には、農業の前にやらなければならないことがたくさんあったようです。でも、農業の前にやらなければいけないことって、何でしょう。農業をさしおいて、社会が一番に取り組まなければならないことって何でしょう。僕にはよく分かりません。
 農産物の市場では、戦争はおおむね歓迎されます。戦乱や天変地異は農産物市況を高騰させるので、在庫を持っている人や流通にたずさわる人は、売り惜しみで法外な利益にありつくことが出来るからです。平和でなければ農業は成り立ちませんが、皮肉なことに、平和なときにはたいして評価もされない農産物が、戦争になると貴重品に変わります。日本国内では、戦乱も天変地異もまあほとんどないに等しいので、現実味のない仮定の話のようなものですが、おそらく法則としては正しいのだと思います。国としてのアメリカには、石油戦略や軍事戦略と同時に、食糧戦略が見え隠れします。
 農民としての僕は、しかし戦争には反対です。たとえ大もうけすることになっても、はっきりと反対です。そもそも、戦争を歓迎する農民になるくらいなら、兵士に志願します。僕はジョン・レノンの考え方に共鳴しますし、ハッピーな世界のために食べ物にかかわりたいと思っています。
 この冬は、アメリカ人の友人達と何回かスキーにいきました。アメリカ人のたくさん集まるところはテロの危険がある、と言われていますが、まさかスキー場で雪遊びに興じているアメリカ人を襲うテロリストもいないでしょう。国家としてのアメリカはともかく、個人のアメリカ人は陽気で愛すべき人達です。おいしいご飯を食べるのが大好きな人達です。
 3月は雪が解け、作業が本格的に始まります。種モミの準備をしたり、タネボカシを作ったりと・・・・、小さな生命に直接触れる作業です。戦争のニュースは、気になって仕方がありません。





HOME

Copyright (C)1997-2003 Akiyama-farm. All rights reserved.

このホームページ上に掲載されているすべての画像・文書などの無断転載を禁じます。