「トンネル」

 謹んでご報告申し上げます。
 初めてこのフロム田んぼを読まれる方は、ギョッとするかもしません。また、長いこと秋山農場をごひいきにしていただいているお客様、私が農業を始めた当初から応援をして下さっている友人知人・関係者の皆様には、ああ、そういうことだったのか、とあらためて合点がいくかもしれません。このフロム田んぼという紙面でいつかは書かなければいけないなあと思いながら、ためらい、躊躇し遠慮し、先送りにしておりました。月日はずいぶんと過ぎてしまいました。
 ・・・・私は、約2年前から「こころの病」をわずらっております。
  ちょうど2年前の田植えのあと、あまりの疲労感と虚脱感で動けなくなりました。朝起きてきて、それで何もする気が起きず、ただ居間でゴロゴロとしているだけです。突然仕事ができなくなりました。最初は「疲れがたまっている」「いや、軽い風邪だ」とタカをくくっていたのですが、1週間がすぎても、どうも一向によくなる気配がありません。あ、これは病気かもしれないと思い始めたのは、さらに1週間くらい経ってからだったと思います。それまで20年以上、病気らしい病気をしたことがなかったので、正直にいうと軽いパニックに陥りました。「俺が病気に? そんなはずはない」。まもなくほとんど睡眠もとれなくなり、怒りと焦りのようなものがないまぜになって襲ってきました。・・・・
 農業っていう職業は、大きな機械も扱いますし、炎天下で肉体を酷使することもありますので、ケガをすることや事故はあるかもしれないと想定はしていました。しかしまさか「こころの病」をわずらうとは驚きでしたね。都会のオフィスで働いていて、人間関係に疲れた人がなる病気だと考えていたのです、自分が病気になるまでは。お医者さんからも「農業なんていう自然が相手の仕事でも、なるんですね〜」と言われるくらいです。
 2年前のフロム田んぼを今振り返って読むと、「イネは不眠症」「3年5組」あたりは、病気と格闘している自分がはっきりとそこにあります。きっと納得がいかなかったんでしょう。おかげさまで現在は睡眠も食欲も回復してきまして、仕事のほうも(健康なときのレベルには達しませんが)だいぶ戻してきました。そしてなにより、病気とそれほど格闘してはおりません。「あるがまま」を受け入れることにしました。
  イネが台風や冷夏とケンカしても勝てないように、私も人間、自然界の生き物です。植物を育てるときと同じように、自分自身を客観的に「ひとつの生物として」ながめることにしました。不運だ、理不尽だと嘆いていても仕方ありません。「病気も人生、順調のうち」「壁に頭をぶつけて、そこで考えをあらためる」。
・・・少しずつ哲学的な視野を広げるいい機会と考えています。
 秋山農場は私の夢から出発しています。まだまだ夢の途中ですが、ひょんなことからいろんなことを振り返るとてもいい機会に恵まれました。そう、自分の人生観や仕事のあり方など、大切なことを深く考えるいい機会です。秋山農場が文字通り雨の中、風の中をなんとかくぐりぬけてこれたのは多くの方々のおかげ。お客様皆様のこれまでご支援・ご愛顧には、本当にあらためて御礼を申し上げます。それからアフコのスタッフ・関係者一人一人に、深く感謝したいと思います。また、地主さん、地縁者の方々、農業の現場、イネや、私たちを支え生かしてくれる自然界の生き物たちにも、感謝したいと思います。最後に「自分と家族」にも。いまだ灯りの見えないうす暗いトンネルの中から、厚い熱い篤い感謝の気持ちをご報告し、いま届けたいと思いました。




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