「農業銘柄」

 銘柄といっても、コシヒカリとかあきたこまちとかの米の品種の話ではありません。株の話です。株といってもイネの株ではなく、株式のことです。最近、東証株価指数が4年半ぶりの高値を更新しました。
 いま、株式投資ブームなのだそうです。なんでも80年代後半のあのバブル期を上回るのだとか。そういわれてみるとここ2〜3年、知り合いで株を始めた人が増えている気がします。個人投資家がインターネットで簡単に売り買いできるので、出来高が急増し、証券取引所のシステムがなんとパンクしてしまった・・・なんてニュースも先日ありました。本屋に行っても、一般雑誌のタイトルにマネーとか資産運用とか年金問題とか、とても増えているように思います。楽天やライブドアが、派手に企業買収をしてみたり、子会社化と業務提携とか言い出したりと、テレビのワイドショーに話題を提供しているのも関係があるでしょう。おかげで僕も、時間外取引とか、敵対的買収とか、株式公開買い付けだとか、専門用語をずいぶんと覚えました。東証株価指数は、一番の底値から「2倍」にまでなったので最近始めた人は、きっとホクホクでしょうね。
 ところで、農業に関する銘柄は東証にはほとんど上場していません。
 なぜでしょう? 昔から不思議なのですが、事実ほとんどありません。上場しているのはハム、牛乳、ビールや洋酒、製粉などどちらかというと「食品」と呼ばれるジャンルばかりで、実際の農産物に関係しているのは、せいぜいキノコメーカーくらいなものでしょうか。指折り数えても片手あるかないか。とても少ないのです。
 僕は妙に新聞好きで、外国に出かけると必ずその土地の新聞を買って、読みます。英字新聞でないものは現地の言葉なので、せいぜい株式欄かスポーツ欄、広告くらいしか分かりません。株式欄には意外なほど、「農業分野」の会社が上場しています。取引もされています。日本みたいに、新聞1面では載せきれないほどたくさん上場していても、「農業ジャンルの銘柄はほとんどない」っていうのとは対照的で、海外の証券取引所には、上場している農業会社が、結構あるんです。ジュース、ワイン、ビール、養鶏、養豚、酪農、花や苗・・・。日本語では株(かぶ)でも、英語ではストック(蓄え)、中国語では「股(また)」になります。言葉に考え方が反映されていておもしろいですね。「股を控える」と書いて、「株式を所有する」の意味です(笑い)。
 日本では戦後ずーっと、農林水産省から農協(今はJA)のラインで、農業分野を仕切ってきたので、資本を集めるのに「株式を上場」という方法は、選択肢になかったのでしょう。それから、小作人や農民の保護の名目で「農地そのもの」の売買や賃貸にも厳しい制限があったことも関係しているでしょう。一般に株式会社が農業をしてもよい・・・ことになったのは、まだほんの最近です。東証に上場していないのも当たり前です。これからは少しずつ増えていくでしょう。古くて新しい業界なのです。僕はもちろん農民ですので、農協の組合員です。出資しています。農協の株主みたいなもんですね。総会に出席したことはありません。配当金もくれますし、勝手に、払い込み増資(というか、口座引落し増資)もしてくれます。いっそのこと、農協自体が上場したほうが、分かりやすいかもしれません。農協は、銀行も保険会社も困ってしまうくらいのメガバンクです。
 先週、某大手証券会社のアナリストより、「食品会社が農業への進出を検討しているようです。農業界ではどうお考えですか」と問い合わせがありました。そんなこと、俺が知るか! ですが、証券会社もいま景気がいいので、まんざらでもないようです。ほんというと、農業ってのは、投入資金の回収が長期にわたるので、サービス業や小売業よりも、株式市場で資金を調達するには向いている業種だと思っています。果樹を植えたり、牛を育てたり、ワインを造ったりって、商品になるまでに何年も、いや何十年もかかりますからね〜。




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