「保存食はどこ?」

 雪にとざされる冬の時期、むかしは食べ物を探すのが相当大変 だったろうなあ、と思いを馳せることがあります。
どんなに雪がふっても人力だけがたよりで重機も自家用車もない時代が、何世紀も、綿々とつづいたのです。買い物に出かけるのも大仕事だったでしょう。深夜まで営業しているスーパーに所狭しとものが並び、自家用車でぶらっと買い物に行けるなんて、ほんの、ほんのついこないだからできるようになった便利な生活です。今となっては及びもつきませんが、食べ物の種類だってこんなになかったはずです。とにかくありとあらゆる食べ物に囲まれています。
 雪国の農村のスーパーに世界中のものが一年中並んでいます。でもそれを日常的に口にするようになったのは、ほんとにごく最近のことだと思うのです。
 冷蔵庫もなかったころ、野菜は雪の中に保存されました。それから何でもかんでも干しました。海に近い新潟で有名なのはシャケやイカ。野菜もいろいろ干します。
 漬け物用ではダイコン、白菜、いろんな菜っ葉など、適当に干してから漬け込みます。水分を飛ばすことで腐敗しにくくなり、塩も利かせやすくもなります。
魚の塩蔵品もおいしい。うまみは濃いけれど傷みやすい内蔵の部位や魚卵は特に。
 家の周辺にとどまらずもうすこし広く目を転じれば、牛乳を保存する方法から派生したバターやチーズ。チーズも外国の乳製品好きのところへいくと、たくさんの種類があって驚かされます。くだものを砂糖で煮詰めたジャム、塩漬けした肉を薫製・熱処理したハムやソーセージの類い、野菜や木の実を酢に漬け込んだピクルス。
 こうやって挙げてくるとたくさんありますね、保存食。考えてみれば暑いところにも寒いところにも世界中にあるんですね。それだけで食べる物もあれば、調味料的にほかの食材と組み合わせて食べる物もあり。まさに食の多様化です。ただ最近は便利さや効率を追求するあまり、合成の保存料や化学調味料、いろんな添加物が氾濫しすぎている気がします。ホンモノではないものが幅をきかせすぎているように思います。
 秋口くらいに、老舗の和菓子屋さんが賞味期限を書き換えていたことが判明しニュースになりました。誰かが死んだとか腹痛で入院したとか、そういう事件ではないのに騒ぎすぎだな、僕は思いました。もちろん賞味期限を書き換えたということが事実なら許されるとこではありません。僕はお菓子屋さんを弁護をしたいわけではありません。ただ食べ物は本来、かならず傷むものです。おかしくなったものを食べればおなかだって壊します。永久に腐らない食べ物は存在しないし添加物まみれでなければ意外とすぐに傷むものです。賞味期限なんて法律か役所の管轄であって、食べる人は自分でも判断しないといけない。味そのものが熟成なのか腐敗なのかは食べる人の感度の領域なのではないかと思うのです。
 冷蔵庫に入れたまま忘れられ、でもいつまでも傷まない食べ物ってありますよね。本来はあれのほうがおかしいのです。腐らない食べ物に囲まれていたら嗅覚や味覚が、きっと退化していくことでしょう。モラルのない食品会社を責めてるだけでは、食生活は豊かにならない気がします。




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