「冬と仲良く」

 雪の多い地域ですので11月から12月にかけて、たくさんの冬支度があります。いろんな準備があるので少し紹介しましょう。
 雪の降らないところの人から見れば「なんと無駄なことばかり・・・」とあきれられてしまいそうですが、僕は冬支度はそれほど嫌いではありません。
 埼玉ですごした高校時代、スキーに行くのが大好きでした。スキーシーズンの直前になると物置からスキー板を取り出してきてウキウキしながらワックス掛けしたものです。その頃の楽しい記憶が沁みついているのかもしれません。
 ここ上越でも、スキー板を出してくるまでは埼玉と一緒ですが、夏のあいだに遊んだ野球のグローブやサッカーボールを片付けるのが一方であります。野球もサッカーも雪のなかではできません。自転車も納屋の奥深くにしまっておきます。
 スキーはスキー場で使うゲレンデスキー用の板と、子供が学校の授業で使うクロスカントリー用の板の2つです。
 冬に乗らない車は車庫にしまって、あとは全部タイヤ交換をします。重たいタイヤを引っ張り出してきて、ジャッキで車体を持ち上げボルトを外し、夏タイヤからスタッドレスタイヤに取り替えます。雪道ですべることのないようにタイヤの溝も忘れずにチェックします。タイヤ交換はちょっとした重労働です。
 駐車場や道路は、地下水で雪をとかすためのパイプやホースを設置点検します。大雪の日にこれが作動しないとひたすら手で雪かきとなってしまうので泣きを見ることになります。水がシャワーのようにシャーと出てくれればいうことありません。
 そして雪かき用、雪下ろし用のスコップ類、多数。ブラシ状のもの、プラスチック、アルミ製、スノーダンプ・・・。大小さまざまです。どかして積み上げた雪で遊ぶためのソリも一緒に用意しておきます。
 庭では伝統の雪囲い。庭木や灯篭が雪の重みで壊れないように荒縄や竹や丸太を使って保護します。雪囲いは、雪国の庭園様式やそれぞれの美意識、またはかけられる予算などによって本当にピンキリです。ただ守るだけならグルグルと縄でもまいておけば済みますし、職人にやぐらを組んでもらったり高く吊ってもらったりすれば、雪見酒でも飲みたくなるような立派な日本庭園になります。
 最後に、1階の窓に木枠をはめ込みます。太陽光線がはいらなくなって室内が暗くなってしまううえに、牢屋の中で暮らしているようで気分もふさぐのですが、屋根の雪を下ろしたときに木枠を入れておかないと雪の重みでガラスが割れてしまうので仕方ありません。逆に完全に雪に囲まれてしまえば意外と室内はあったかく過ごせます。
 こうやって書いてみると、やることいーっぱいありますね。
 そうそう、防寒着のほかに長靴やブーツの類も2〜3足、準備しておかないといけません。中が必ず濡れるので1足だけだと乾かないのです。
 雪の降らないところから見ると、「いったいそんなに何をしてるの」と不思議がられてしまいます。太平洋側で生活している方には想像できない世界かもしれません。
 興味がございましたらぜひ一度お出かけください。東京からだと新幹線乗り継いで3時間ほどです。1週間も滞在したら、日本はほんとに広かったんだなと世界観が変わってしますかもしれません。
 雪国の生活は不便なことも多々ありますけれど、銀世界の中で暮らすというのは、幻想的な風景の中で日常を過ごすことです。不便さとてんびんにかけてもいいくらいの「美の世界」に身を置くことなんじゃないかと思っています。 




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