「草食系」

 草食系男子という言葉をよく聞くようになりました。
 日本が豊かになってきたために、欲望や野望など激しい情熱のようなものがなくなってきて、特に若い男の人に目立つようですが、人間関係も仕事もより浅く淡白になってきているといわれています。草食系と言うからには、肉食をやめたベジタリアンが増えているのかもしれません。
 ガツガツしない。ギラギラしない。覇気が感じられない。そう一見上品な「やさ男」が本当に増えているのでしょうか?
 若者のエネルギーは、社会全体の活力に密接に関係があるので、選挙の時期だから余計に感じるのでしょうが、日本の将来はやや曇りがちにも見えてきます。
 ただ、いつの時代にも「最近の若いもんは・・・。」というグチやなげきはずーっとあったようですから、むしろ世の中が変わっていく中で中高年のほうが取り残されているのかもしれません。ジェネレーション・ギャップですね。
 そういえば、私も学生の頃は「新人類」などと呼ばれておりました。

 さて、草食系。田んぼのまわりの生態系について観察すると、人間社会とはちょっと違った感じです。
 草を食べて生きているのは、だいたいが小さな虫。それを食べるのは、クモであったりカエルであったり・・・。クモやカエルを、ヘビやらネズミが食べ、上空から狙っているカラスやトンビがそのヘビをエサにする。この食物連鎖が、厳然と存在します。
 私たちコメを育てる側からすると、田んぼの周りから虫を減らしたいんです。ウンカとか、カメムシとか、イナゴなど、そういう害虫を減らしたい。草食系に虫は、イネを食べるので問題があります。虫が雑草を食べてくれればいいのですが、栽培している作物のほうが柔らかくて美味しいので、虫は雑草よりもイネを食べています。
 でもだからといって殺虫剤をバンバンまくのもどうかと思います。害虫じゃないホタルやトンボまで一ぺんに死んでしまいますしね。
 環境に配慮しながら、食物連鎖のピラミッドを大きく崩さず、上手にコントロールする。それが農業の現場で取り組むべきやり方のようです。ヘビやカエルやクモと仲良くしながらこのピラミッドを維持する。一つの種類の虫だけが極端に増えすぎないように、多種多様な生物を認めるのです。
 しかし、実際にはこれがなかなか難しくて、ヘビなどは肉食ですから「どう猛」に見えるのですが、意外と生命力が弱い。やっぱり草食系の小さな虫のほうが環境の変化にも強く、しぶとい。

 人間ではどうなんでしょう。肉食系だった中高年から「草食系」と見くびられてアダ名までつけられてものの案外、そっちのほうが、しなやかでしたたかで、しぶとい存在なのかもしれません。




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