「苗半作」

 農業の格言に「苗半作」というものがあります。
 数ある工程のなかでも、苗つくりは特に難しい。苗さえ良いものが出来れば、もう半分出来たようなもんだ。それで苗半作。
 春は種まき、そして苗つくりの時期なので、毎年、この時期になると、あらためて苗半作という言葉をかみ締めます。家庭菜園をされている方は、ホームセンターや園芸店で、野菜の苗を手に取ることも多いのではないでしょうか。同じタネ、同じ管理であっても、ポットに入ったひとつひとつの苗の株は、みな様子が違います。大きいもの、小さいもの、葉っぱのたくさんついているもの、葉っぱのほとんどないもの、色の濃いもの、薄いもの。どれを買おうか、吟味します。なにしろ一旦畑に植えたらその後、半年も付き合わなければならないからです。
 イネも一緒で、やはり、苗半作。苗の管理がいちばん気を使います。今年はとくに、例年以上に気を使っています。春の訪れが遅かったためです。この冬は記録的な豪雪で、雪がなかなか消えませんでした。桜の開花も寒さで約1週間ほど遅れました。ゴールデンウィークを迎えても、雨やくもりの日が多くて真冬のセーターが手放せません。水路には水が流れはじめましたが手を入れると氷水のように冷たく、田んぼの土の温度・地温もあがってきません。
 そうそう、あぜ際をスコップで掘っていたら、カエルの冬眠に遭遇しました。まだ寝てる。お、あぶない、あぶない、人間に殺されちゃうよ、てなかんじでやっと起きてきましたが、寝ぼけまなこです。とうとう、ヘビには一度もお目にかかれませんでした。いつもであれば草むらを這うヘビに、追い掛け回される頃なのですが・・・・(僕はヘビが大嫌いなのです)。
 イネの一生を、人間の人生にたとえれば、種まきから1週間〜10日というのは生まれたての赤ちゃんのようなものです。温度、栄養、病気、いつも気にしながら、こまめに見て回ることになります。ちょうど田植えが小学校入学くらいでしょうか。
 今年は低温で、苗の生長も遅れぎみです。1週間程度、田植えを遅らせようかと思案しています。苗が苗代にいる間は、少しぬるめに管理されているのですが、田植えして本田に移植すると、あまりの寒さにイネが凍えるというか、風邪を引く可能性があります。しかし、だからといってあまり遅らせていいものかどうか。
 作業的な段取りに支障が出る以上に、もう小学校に入れる月齢なのに、背が低いし、学校は寒いみたいだから3年見送るか、とそういう判断を下しているような感じになります。背が低いので小学校には行かせない、という話になったら、たとえばウチの子なんか2年くらい入学が遅れたのでは・・・(んん、そんなにチビじゃないか・・・?)、そんなことってある??
 少々、丈が短くて頼りない苗でも、ある程度カレンダーどおりの段取りで進めて行きたい気持ちもあります。田植えの頃に気象条件が悪くて生育が遅れていても、、背の低かった子供が中学生になって急に背が伸びるように、後々になって生育が追いついてくることが充分考えられるからです。さあて、どうしましょう?
 ランドセルに背負われるようなちびっ子もいざ学校に通い始めると「いってきま〜す。」と元気よく登校します。さてさて、苗の元気な「いってきます」をどのタイミングで送り出してあげましょうか。




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