「等級検査」

 秋山農場の今年のコメは収穫が終了し、農協にお願いしていた検査結果も、一通り出揃いました。玄米の等級検査です。一部で1等があるものの、多くが2等という残念なものでした。例年であればほとんどが1等ですので驚くべき結果です。ただし、新潟県全体で1等比率は極端に低く、また他県でも良くないとの報道がありますので異常気象の影響は津々浦々に及んでいると考えて間違いありません。あまり報道されませんが、新潟以上に夏に暑いところでは、より深刻かもしれません。
 直接聴いた話です。関東地方のある地域では、等級が1等、2等、3等までにおさまらず、ほとんどが「規格外」となってしまったのだそうです。玄米を一般の流通にのせるには、3等までに入る必要があり、「規格外」となると農協に買ってもらうことさえ難しくなります。本来、農協は、農民の相互扶助を目的として組織されたはずですが、現在は「卸売り」や「仲卸し」に近い業態に変わりましたので、スーパー、デパートなど小売に卸せない商品・農産物は、地元で取れたものでも仕入れません。ただ、規格外は普通はあまり見ないのですが。
 困った農家は9月の末に、刈るのを止めてしまいました。コンバインでの刈り取り、乾燥、調整、出荷といった作業をしても、農協でさえ値段を付けないのなら(収入にならないのなら)赤字が膨らむだけ。うーん、捨てるか・・・・と。そこでトラクターで田んぼのイネを踏み倒す人も出てきたようです。
 同じ農民として、想像したくもない恐ろしい話です。
 もちろん、キャベツなどの野菜では、豊作基調で価格の下落が続くと、収穫せずに畑でつぶしてしまうことはよくありますが、コメはキャベツと違い半年、1年と保存・備蓄がきくもの。収穫しないでつぶしてしまう話は聞いたことがありません。当事者には、苦渋の決断だろうと思います。胸が痛みます。

 今年の新米の感想は、10月、全国のお客様よりたくさん届きまして、かなり好評でした。正直、不安も少しあったのでほっと胸をなでおろしました。コメの場合、虫に食われたものや生育障害で変質してしまった米粒が、等級を落とす原因なのですが、これは一粒一粒を丁寧に選別しさえすれば、なんとか取り除くことが出来ます。等級検査の1等と2等の差は味の面では、ほとんどない、ということをあらためて思い知りました。もちろん精米作業や保管には、これまで以上に気を使っています。ただ、お客様にとっては、見た目以上に食味のほうが大事なのだと教えていただきました。
 農民が、1等だ、規格外だと振り回される等級検査って、そもそも何なんでしょうか?
 1番の問題は、食味が検査対象ではないということです。例えば、キャベツなら虫食い、キュウリなら曲がり、ナスならサビがあれば、間違いなく等級が落ちます。食べるときに一番大事な甘さやみずみずしさは、二の次で、見た目がきれいかどうか、大きさはそろっているかどうか、で判定されるのです。コメなら、ツヤ、香り、うまみ、粘り、甘さ、歯ごたえなど、本来は大事な基準は、実は一切検査されません。
 生産者と消費者の直接取引をしていると(市場外流通といいます)、中間業者の卸を飛ばすメリットに、ときどき気づきます。
 今回、等級検査について考えるうちに、見た目の検査で評価が決まるのではなく、本当の意味での品質とは何か、味ではないか。味が評価を決めるのだ。そんなことを再確認できました。ありがたいことだと思います。生産者と消費者の双方にとってのメリットです。私達にとっても、そしてお買い求めいただき食べてくださるお客様にとっても、双方のメリットではないでしょうか。
 どうぞ忌憚のないご意見ご感想をお寄せ下さい。叱咤激励もおねがいたします。無茶な低温、殺人的な高温をいくつも乗り越え、より良いものを育てたいと願っております。「食味の基準」のようなものを私達が作れたら、と遠い夢を見ながら、やっています。 




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