「土質の話」

今年の稲刈りは、9月中旬に本格的な台風に見舞われ、近くの川が決壊するという不測の事態もあって、苦労の多い大変な稲刈りでした。幸い、洪水の被害を直接受けることはなく、稲は無事。助かりました。しかし、雨の多い収穫期で、泥んこになりながらの消耗戦でした。本来、新潟には台風はあまり通過しません。太平洋側に上陸しても、勢力が弱まり温帯低気圧となったころにやってくるか、もしくは雨のない熱風だけが通り過ぎるフェーン現象になるかの、大概はどちらかです。それが今年は収穫期の真ん中に台風がやってきたので、ほんとにめずらしいことでした。

新潟県が「米どころ」と呼ばれるにはいくつかの理由があると思うのですが、まず第一の要因は、「豊富な雪解け水」があげられます。
もともと年間の降水量はとても多いのです。冬は大雪ですからいうまでもありませんが、夏だって決して少ないわけではありません。
以前に新潟市から上越市まで約150kmを自転車で新潟県を縦断したことがありますが、そのときにいくつもの大きな橋を渡りました。「川、ばっかりだ」と痛感しました。
雪解けの水は、川を作り、田を潤します。そんなわけで新潟という地域の特徴は、川が多いこと、田んぼが多いことです。雪は標高の高いところでは5月〜6月ごろまであるので、水はいつも冷たく枯れ上がる心配がほとんどありません。平地を全部田んぼにしても、足りるだけの水があるということですね。水がもし少ない土地だったなら、農地の多くは田んぼでなく畑になっていたかもしれません。人間の努力、農家の頑張りもあるにせよ、稲作に適した気象条件というのは大きいと思います。

そしてこの秋に再認識したのは、新潟特有の「軟弱な土壌」も、もうひとつの要因だろうなということです。新潟にある山は、土の山が多く、岩山や石で出来た山などはほとんどありません。雨や雪の重みがかかると地すべりを引き起こし、山から土砂が流れ出します。その土砂をたくさんの川が下流に運んだ姿が、現在の新潟県の平野部です。細かい粒子の堆積ですから、土質は基本的に粘土質。軟らかくてネチネチとした地盤です。
新潟の「潟」という文字のとおり、沼・湿地のような地盤なのです。
 県都・新潟市は人口80万の政令指定都市ですが、地下鉄がありません。天候の影響を受けないので冬場は特に必要といわれても、土質の問題で地下鉄建設は出来ない、とは有名な話です。(ま、本当は需要が少ないのかもしれませんが・・・)

 新潟県は面積が広く(日本では5番目だそう)、しかもたてに細長いので、往来は不便です。なので、明治の廃藩置県ではいくつかに分けられたり、また近県の長野あたりとくっついていても地理的にはおかしくなかったと思うのですが、やはり、歴史的・風土的には、ひとつの新潟という文化圏があるように思います。
 雨が多い気候、軟弱な土壌は、県民の農業や生活様式を決定付け、ひいては住民の生活観や県民性を形作りました。沼に胸まで埋まりながら田植えをする、湿田に足を取られながら稲刈りをする、そんな昔の白黒写真を思い出せば、新潟の人は実直で粘り強いという評価は、さもありなんと感じます。粘土質の土は濡れるとネチネチ、乾くとカチカチです。実に扱いにくく作業性も悪いです。地元の方言では土のことを「ベト」と呼ぶくらい、ベトベトしているため、トラクターやコンバインなどの農機具にも湿田用の「新潟仕様」というスペシャルバージョンが存在します。しかし、イネの栽培には適しており、特に微量の肥料分の流亡が少ないというメリットがあります。
 今年の収穫作業がいつになく大変だったのは、秋口に雨が多くて、地盤が緩んだためです。それでも、なんとかけりをつけた今となっては、美味しいコメを生む特異な土壌にあらためて感謝したい、そんな気分になりました。

 風土とはよく言ったもので、土や雨や風は、イネを育てると同時に人の気質も育みます。
粘土質の土地で育ったコシヒカリは粘り強い品質ですし、そこで生まれて育った我が家の子供たちも、真面目で粘り強い性格です。埼玉と滋賀出身の両親には備わっていない気質があって、やはり生活環境の影響は大きいのだなと実感しています。」

今年の稲刈りは、9月中旬に本格的な台風に見舞われ、近くの川が決壊するという不測の事態もあって、苦労の多い大変な稲刈りでした。幸い、洪水の被害を直接受けることはなく、稲は無事。助かりました。しかし、雨の多い収穫期で、泥んこになりながらの消耗戦でした。本来、新潟には台風はあまり通過しません。太平洋側に上陸しても、勢力が弱まり温帯低気圧となったころにやってくるか、もしくは雨のない熱風だけが通り過ぎるフェーン現象になるかの、大概はどちらかです。それが今年は収穫期の真ん中に台風がやってきたので、ほんとにめずらしいことでした。

新潟県が「米どころ」と呼ばれるにはいくつかの理由があると思うのですが、まず第一の要因は、「豊富な雪解け水」があげられます。
もともと年間の降水量はとても多いのです。冬は大雪ですからいうまでもありませんが、夏だって決して少ないわけではありません。
以前に新潟市から上越市まで約150kmを自転車で新潟県を縦断したことがありますが、そのときにいくつもの大きな橋を渡りました。「川、ばっかりだ」と痛感しました。
雪解けの水は、川を作り、田を潤します。そんなわけで新潟という地域の特徴は、川が多いこと、田んぼが多いことです。雪は標高の高いところでは5月〜6月ごろまであるので、水はいつも冷たく枯れ上がる心配がほとんどありません。平地を全部田んぼにしても、足りるだけの水があるということですね。水がもし少ない土地だったなら、農地の多くは田んぼでなく畑になっていたかもしれません。人間の努力、農家の頑張りもあるにせよ、稲作に適した気象条件というのは大きいと思います。

そしてこの秋に再認識したのは、新潟特有の「軟弱な土壌」も、もうひとつの要因だろうなということです。新潟にある山は、土の山が多く、岩山や石で出来た山などはほとんどありません。雨や雪の重みがかかると地すべりを引き起こし、山から土砂が流れ出します。その土砂をたくさんの川が下流に運んだ姿が、現在の新潟県の平野部です。細かい粒子の堆積ですから、土質は基本的に粘土質。軟らかくてネチネチとした地盤です。
新潟の「潟」という文字のとおり、沼・湿地のような地盤なのです。
 県都・新潟市は人口80万の政令指定都市ですが、地下鉄がありません。天候の影響を受けないので冬場は特に必要といわれても、土質の問題で地下鉄建設は出来ない、とは有名な話です。(ま、本当は需要が少ないのかもしれませんが・・・)

 新潟県は面積が広く(日本では5番目だそう)、しかもたてに細長いので、往来は不便です。なので、明治の廃藩置県ではいくつかに分けられたり、また近県の長野あたりとくっついていても地理的にはおかしくなかったと思うのですが、やはり、歴史的・風土的には、ひとつの新潟という文化圏があるように思います。
 雨が多い気候、軟弱な土壌は、県民の農業や生活様式を決定付け、ひいては住民の生活観や県民性を形作りました。沼に胸まで埋まりながら田植えをする、湿田に足を取られながら稲刈りをする、そんな昔の白黒写真を思い出せば、新潟の人は実直で粘り強いという評価は、さもありなんと感じます。粘土質の土は濡れるとネチネチ、乾くとカチカチです。実に扱いにくく作業性も悪いです。地元の方言では土のことを「ベト」と呼ぶくらい、ベトベトしているため、トラクターやコンバインなどの農機具にも湿田用の「新潟仕様」というスペシャルバージョンが存在します。しかし、イネの栽培には適しており、特に微量の肥料分の流亡が少ないというメリットがあります。
 今年の収穫作業がいつになく大変だったのは、秋口に雨が多くて、地盤が緩んだためです。それでも、なんとかけりをつけた今となっては、美味しいコメを生む特異な土壌にあらためて感謝したい、そんな気分になりました。

 風土とはよく言ったもので、土や雨や風は、イネを育てると同時に人の気質も育みます。
粘土質の土地で育ったコシヒカリは粘り強い品質ですし、そこで生まれて育った我が家の子供たちも、真面目で粘り強い性格です。埼玉と滋賀出身の両親には備わっていない気質があって、やはり生活環境の影響は大きいのだなと実感しています。

 



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