「それぞれの師走」

月日がたつのは早いものです。いつのまにか12月になってしまいました。
 12月は別名「師走」といいますが、どうして師走というのでしょう。今では旧暦の呼び名はほとんど使わず、1月〜12月まで数字でいう機会が多いのですが、12月の師走はそのなかでは多く使う気がします。
 睦月、如月、弥生、卯月、皐月、と来て、水無月、文月、葉月。9月、10月は、長月、神無月と続き、最後に、霜月、師走。
 並べてみるととても風流な呼称で、歌でも詠むなら、数字よりもぜったいにこっちが優れています。別名師匠が走るほどいそがしい・・・で「師走」。なんだか情景が目に浮かび、ちょびっとユーモラスですね。昔の日本人にとって12月は忙しい季節だったのでしょうか。

現在でも12月は、年末セールやクリスマスセールがあって、街の中はとくべつな飾り付け、特別な雰囲気になります。華やかで活気のある時期です。また、お歳暮を贈りあったり、忘年会でお酒を飲んだり、物も人も動きます。会社の決算のところもありますから、今でもやっぱり12月は昔から代わらぬ、忙しさ、あわただしさがあるかもしれませんね。
農村の習慣でも、11月から12月にかけては、一年の区切りで、もろもろの精算をする時期です。
たとえば、地代。うちの農場は、借地方式の経営ですから、たくさんの地主の方から農地をあずかっていて、春から秋にかけて農作業をさせていただきます。100年も前ですと、大地主に対して、農地を細かく小作がたくさんいたのでしょうが、今は構造が逆になって、小作のほうが、たくさんの地主から農地を集めています。そしてその地代の精算は、すべて年越し前です。土地の利用は先で、お代はあと払いとなっています。この習慣は、戦後の農地改革よりずっと前から続いている習慣だろうと思います。地主さんには「1年間お世話になりました。おかげさまで年越しが出来そうです。ありがとうございます。」とご挨拶に伺って地代を納めます。もちろん最近では、銀行振込みも増えましたので、大家さんと店子さんが直接、顔をあわさない、そんな都会の賃貸マンションのような現代的な精算方法も増えてきました。
ただ昔ながらの精算方法で、お金は要らない、地代は米で欲しい、という地主さんも、いまだ健在です。30kgの紙袋で玄米をお届けし、それを地代として収めます。都会のマンションの家賃を支払うのに、日本酒で納めた、米で納めたという話は聞きませんが、農地の地代については、ごくまれに現物での精算が続いています。コメや酒に貨幣としての価値があった時代は、長かったのだろうと思います。農村の歴史ですね。

 雪国ですから、田んぼから人だけでなく、動物たちもいなくなります。広々として、がらんとして、静かなもんです。あれだけたくさんいた動物たちはいったいどこへ姿を消すのでしょう。
 鳥たちは山に帰り、巣を作るのでしょうか。ヘビやカエルは土にもぐって冬眠でしょうか。
小さな虫たちもいったいどこへ行くのか、不思議なくらいまったく見当たらなくなります。ネズミはあぜ際に直径5センチくらいの穴をあけて、そこで暮らしているようです。モグラみたいに地下で暮らすようです。モグラたちとはケンカにならないのでしょうか。すると、モグラのねぐらも気になります。動物たちもそれぞれ冬支度できっと忙しいことでしょう。冬眠するものはエネルギーを体内に蓄える必要がありますし、寝ずに生活するものは、巣の中に食料を蓄える必要があります。
 忙しく走っているのは、人間の師匠だけでなく、私たちの友達の獣たちも案外いっしょかもしれません。

 
雪の重みで折れた枝も花芽が膨らみ始めました
雪の重みで折れた枝にも花芽
青空と雪の田んぼ
雪の下は、湿度100%も温度0℃と微生物好みです



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