「雪、少なければ・・・」
2020年6月号

   国民全員に一人当たり10万円という政府からの給付金、給付が始まりました。
 その他にも、中小企業を支援するための資金が、次から次へと出てきています。
 しかし振り返れば、消費税を増税したのは昨年の秋のことでした。赤字国債を増発しているわが政府は「財政がひっ迫している、なんとか再建しなければならない」と増税に踏み切ったのでした。で、その増税の直後に、このコロナ騒動です。一転して政府は財政出動を拡大することとなりました。もちろん経済の落ち込みは歴史的なレベルですから、日本に限らず、世界中でお金がバラまかれています。しかもお金は、紙幣からデジタルに大きく移行しているので、千円札や一万円札を印刷する必要もなく、ただデジタルの数字を1とか0とか増やすだけです。今ではどこの国の政府も、いとも簡単に大盤振る舞いが出来るようになりました。お金の総量は、劇的に増えています。
 学生の頃、経済学の授業で「モノが増えずにお金だけが増えると、インフレになる」と習いました。すぐにインフレになるかどうかはともかく、政府のちぐはぐな対応といい、バランスを欠いているように映ります。このことが何を意味するのか、何をもたらすのかは、私にはよくわかりませんが、極端なことが起こらぬことを祈るばかりです。

 今年の冬は、ここ数十年で初めてといっていいくらいの雪の少ない冬でした。
 屋根の雪下ろしを1回、2回としなければならない冬がある一方で、この冬はせいぜい30cmくらいしか降雪がなく、拍子抜けするほどでした。あまりの雪の少なさのために、近隣のスキー場では倒産してしまうところが出てしまいました。雪が多すぎで生活に支障がでるのも困りますが、少なすぎる雪も、また大問題なのです。
 おコメのお客様から「水不足にならないといいですね」と心配の声をいただくこともございます。確かにその通りで、お気遣いは本当にありがたいことです。幸い、田植えの期間中、用水路にも近くの大きな川にも、水量は十分にあって不都合はありませんでした。これから梅雨に例年並みの雨が降れば、今年1年の水はなんとか持つのではないかと感じています。
 ただし雪の少ない影響は、農業用水にとどまりません。実は、小さな生物が例年よりも多いのです。例えば、虫。それから、ネズミ。1mほどの積雪があれば、かなりの重みが、地中にある巣には加わるため、潰れてしまいます。また越冬のための場所も氷ついて、凍死する虫たちも多いと思われます。ところが今年は暖冬小雪だったために、多くの小動物が越冬に成功し、わが世の春を謳歌しています。
 ネズミやモグラは田に穴を開けるので、私たちの水管理を派手に妨害します。田んぼのネズミには苗の根っこや若い芽をかじる不届き者もいます。虫たちも、カマキリやヤゴやクモなど肉食のわずかな種類を除けば、食べるのは葉っぱです。家庭菜園の畑には、すでにアブラムシの襲来があって、野菜や果樹の葉っぱが食い荒らされています。今はまだ田んぼにははっきりとした被害は出ていませんが、安心は出来ません。つい先日、東アフリカでイナゴのような虫が大量発生して、大飢饉になったとの悲惨なニュースを見ました。そんな不安が頭をよぎります。
 しかしまあ、かといって、ネズミを退治する殺鼠剤や、虫を皆殺しにする殺虫剤をまくべきかというと、それはそれでためらいます。農薬がすべて危険なわけではないのですが、なるべく農薬に頼らないでする方法を考えたいと思うのです。
 葉っぱを食べる虫は、ミントのような香りの強いものを嫌います。ニンニクやニラ、ネギにも寄りつきません。(なんだ、俺の好きなものばかりじゃないか・・・?)そういったものを上手に混ぜて植えれば、ひとまず畑は虫害から守れるのではないか、などと策を練ります。
 しかし、広い田んぼはどうすべきか? 農薬を使わないのであれば、やはり自然界のバランスを維持して、それに期待するよりありません。ネズミの天敵のヘビを田んぼに放すか?いや、トンビやカラス、サギなど大型の鳥に飛来してもらう方法を考えるか? 小さな虫を倒すには、結局、虫を捕食するもの、例えばクモやテントウムシの偉大な力を借りるのがいいのではないか・・・? ではどうやって田んぼにクモを増やすのか? ヘビだってクモだって、エサが多いので自然には増えていくのでしょうけれど、自然増以上に増やす方法を模索します。「風が吹けば桶屋がもうかる」ではないですが、「雪が少なければヘビが増える」が田んぼで起こるのですね。
 自然界では一つのものが増えすぎて極端に他を圧倒するということは、案外、摂理に反するのかもしれません。













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