「夏の日の出来事(友達を探した日)
2020年8月号

選挙をするたび 格差は 拡大しているのか
政府が何か発表するたび 景気の波は 拡大しているのか

空に浮かぶ 入道雲は 東へ西へ
巨大なズー体のくせして 驚異の身軽さ
どうしたら あんな風にできるのかな
ときどき激しく泣いてみせて 地上の僕らを あわてさせる

草間で 網を張る クモは じっと動かない
吹けば飛ぶような 小さな身体で 空間を支配している
重厚長大な鉄の意思 ただ ひたすら待つ
どうしたら あんな風にできるのかな

アクリル板に 囲まれたので
世界が ゆがんで見えるとき
それこそが 蜃気楼だと 誰かが言った
ウソか マコトか マボロシか

過疎地を走るバスは 時間通りに 東へ西へ
乗客は だれもいない
古い車体を きしませて 大汗かいて走ってる
田園地帯の 風景の一部に 取り残された

コロナ時代の新幹線は 今日も猛スピード
乗客がいるのかどうかも 見えやしない
新しい車体を 光らせて 空間を切り裂く
田んぼの真ん中に 不協和音だけを 残していった

息もできないような 熱波に襲われ
世界が ゆがんで見えるとき
それこそが 蜃気楼だと いつかのイネが言った
僕は アゼを歩き回って 友達に会いにいく

スマホの 電波に 囲まれて
農業の将来を 教えてもらうとき
共同体の 幻想なんだと 足元のイネが 言った
僕たちは アゼを歩き回って 友達に会いにいく













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