おいしいコメの条件


銘柄米

●品種と産地

 味を決める一番のポイントはまず品種。
 コシヒカリ、ササニシキ、あきたこまち、ひとめぼれ、など、いろんな品種を耳にしたことがあると思います。これらの有名品種の他にもたくさんの品種があり、もち米、酒米を含めて10品種以上を栽培している農家もたまにいます。
 そのなかでも最上位に位置するのはなんといってもコシヒカリ。これは文句なしでしょう。コメの持つ本来の甘み、コク、そして粘り。日本稲作の長い歴史の上でも最高傑作と評されています。
 当然、南は九州から北は北海道まで作付けがされているはずです。作付け面積でも、国内ではダントツの1位。コシヒカリが植えられる条件であれば出来る限りコシヒカリを作付ける・・・・が農家の本音です。

 味の面でいうと、ササニシキやあきたこまちは、コシヒカリに比べるとかなり淡泊で、良く言えば「さっぱりした味」、悪く言えば「味が薄い」ということになります。
 10年ほど前、コシヒカリと並ぶ横綱と呼ばれたササニシキは、冷害に弱く、その主産地であった東北地方でも作付けは最近めっきり減りました。粘りが少なくポロポロとしているので、寿司米としては重宝がられ、今でも「ササニシキはありませんか」と時々お寿司屋さんから問い合わせがあります。
 東北地方で、ササニシキに変わる品種として登場したのが、ひとめぼれとあきたこまちです。どちらの品種もコシヒカリの血を半分ひいており、確か父親か母親のうちどちらかがコシヒカリであったはずです。味の良い品種としてのコシヒカリに、冷害に強い品種を、それぞれかけ合わせて出来たのがひとめぼれとあきたこまち。いうなれば、全てコシヒカリ一門です。コシヒカリ一門にあらずんば良質米にあらずという言葉さえあります。

 次に産地。
 農産物を見るとき、どこで作られたのかは非常に大事です。気温、降水量、土壌、用水、風向き、標高・・・・おいしいものの出来る産地というのは、おのずと限られてきます。ミカンといえば愛媛、リンゴといえば信州や青森、梅といえば和歌山。何にでも本場というものはあるものです。ビニールハウスで作るのならいざしらず、露天で栽培しなければならない以上、自然条件を無視できません。
 おコメの場合は、我が新潟県を筆頭に、南東北方面、北陸信越方面のものが、現在ランク上位を占めています。比較的寒い地方に集中しているといえます。気温、積雪量と関係があります。また土壌も、火山灰土壌や隆起した土地ではいけません。沖積土壌、つまり、洪水や氾らんによって出来た扇状地や盆地がイネには適しています。
 
 銘柄米産地という言い方は、古く江戸時代からあり、大阪が米の集積地であった頃から「一番」の産地は京都、千葉、加賀と各地を移り、ひとつ所に決まっていません。戦後すぐの頃は、山形が最上位にあったと聞いています。
 したがって、やがては「新潟コシヒカリ」も首位を明け渡す日が来るのかもしれません。しかし、減産が叫ばれる今日、コシヒカリに変わる品種、コシヒカリを越える品種を、開発し普及していくことは相当むずかしいようにも思います。

●食味ランキング

 コメは全ての都道府県で作られています。(そう、東京でも大阪でも作られています!)
 いろんなコメがあるわけです。そこで「食味ランキング」というものがあります。まず、県ごとに分け、さらに細かく地域ごとに分け、そこでとれる品種と組み合わせて、おいしい順に順番を付けています。大きく分けるとA、B、Cとランクがあり、Aの上には特Aという最上ランクが、またAの中にもBに近いほうのAとか、特Aに近いほうのAとか、細かく分類されています。
  例えば「99年産コシヒカリの○○県××地区はA地区」などと呼ばれます。年度によってコメは出来が違うので、このランキングは毎年毎年改訂されます。

 しかし、これはスーパーや米屋で売られている米の袋には普通記載されておりません。なぜか。
 結局は米屋が玄米でおコメを仕入れるときの目安なんです。あくまでも大まかな目安なのです。コメは見ただけでは味はわかりません。米屋さんは仕入れるとき、全てを食べるわけにはいきませんので、ランキングを目安に値段を付けるわけです。BよりもAを高く買うわけです。
 時々BのほうがAよりもおいしかった、なんていうことがあるようですが(だから、このランキングはあまり大きく公表されないのでしょう)、それでも「品種」と「産地」で大体の見当はつくようです。


新潟のコシヒカリ

●コシヒカリと新潟の関係
  1. 化学肥料の施用量が少ない
    1. 新潟の水田は沖積の肥沃な土壌。
    2. そのため、窒素やカリなどの化学肥料の施用量が、他県より少ない。
    3. 「コシヒカリ」は倒れ易いので、とくに施肥量の少ない栽培をしている。
    4. その結果、お米の窒素(蛋白質)含有量が少なくなっている。
  2. 登熟気温の最適値に近い
    1. 登熟期間中の平均気温が24〜25℃で最適値に近く、登熟適温地域である。
    2. ちなみに、福井県は26℃、高知県、宮崎県、鹿児島県では27℃以上となる。
  3. アミロース含有量が低い
    1. 登熟初期が高温で日射量が多いので、アミロース含有量の低い粘る米ができる。 (アミロースは、うるち米にはなく、もち米にはないでんぷんの一種で、でんぷん全体の湖化を阻止する因子。アミロース値が低いほどパサつきが少なくなり、また、アミロペクチンが高いほど粘りがあります。)

コシヒカリのおいしさの決め手は、
アミロース含有量の低さ。

 一般的においしいお米とされるのは、炊きあがりが美しく、ほんのりとした甘味と香りがあり、ふっくらと柔らかく粘りがあること。
 米の味の善し悪しを決定する食味テストでは、外観、香り、味、粘り、柔らかさという項目をチェックしますが、コシヒカリはこのすべての項目が高得点。
 食味不良因子といわれるアミロース含有量が低いためバサつきが少なく、代わりに粘りを出すアミロペクチンが高く、ねばりのあるおいしさが生まれます。


●それでも本物は少ない

 現在「新潟コシヒカリ」として販売されている量は、実際の収穫量のなんと10倍だということをご存じでしょうか。
 全国津々浦々どこの米屋、どこのスーパーに行っても、「新潟コシヒカリ」を置いていない店はありません。「魚沼コシヒカリ」でさえどこにでもあります。いっくらなんでも、そんなにたくさんありませんよ。残念ながら新潟県内の収穫量はきまっています。
 言いたくはありませんが、袋の表示に偽りあり、です。一種の詐欺ですね。米粒を見ただけではどこで作られたコメなのかわからないのをいいことに、勝手放題。「詐欺も商売のうち」・・・・悪徳米屋が多いのです。
 それにしても10倍とは、ひどいと思いませんか。本物に出会う確率は恐ろしく低い。
 コメは見ただけではほとんど区別がつきません。たとえば、霜降り牛肉に入っているサシ、甘いリンゴに入っている蜜、そういうはっきりとした目で見える差異がコメにはないのです。食べてみなけりゃわかりません。
 味の違いだって、かなり微妙です。悪徳商売が横行するのは、ほとんどの人がニセ物に気づかないか、容認しているからです。飽食の時代といいながら、コメの味の微妙な差を見抜ける人が、減ってきているのかもしれません。
 

農家によるイネ作り

 

●農家はメーカー

 食味ランキングが絶対のランキングになり得ないのは農家ごとに作り方が違うからです。私たちはそれぞれ独立したメーカーですので、作り方が当然違います。酒蔵では同じ町内にあったとしても、蔵ごとに酒の味が違うでしょう。それと同じです。地元の農協などが作成した「標準栽培指針」なるものはあるにしても、生産者ごとに作り方が違うのです。
 

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